懐かしの「日ペンの美子ちゃん」に逢える本 [エッセイ]
書店で出会っても、「どうしようかなー」と思い、買うべきか、買わざるべきか悩んでしまう本というのがあります。貧乏だからというのもありますが(涙)、さすがに最近は本の置き場に困って整理しなくてはいけない状況に追い込まれつつあるので、できるかぎり無駄な本というのは買いたくないのが本音なのです。昔なら資料としての価値があれば、何でもかんでもとにかく買ってしまったものでありますけれど。
そんなときに、出会ってしまったこの奇妙な本。岡崎いずみ「あの素晴らしい日ペンの美子ちゃんをもう一度」(第三文明社)なのでありますがね。「まったく、このコラムは真面目な書を紹介しているのか、軽いノリな本ばかりを紹介しているのか判断が付きかねる……」なんていうご意見を書かれてしまうかもしれないけれど。でも、出会ってしまったのだから、仕方ない。美子ちゃん本と初めて会ったその日から一週間、悩みに悩んだわたくしは、昨日思い切って本書を購入してしまったのでありました。この切ない恋に拍手あれ・・・・・。パチパチパチ(まばらな拍手だね)。
閑話休題。本書は、日本の女子なら誰でも知ってる(はずの)あの謎の広告マンガ「日ペンの美子ちゃん」を徹底追及した研究本であります。こう聞くと、サザエさんを取り上げた「磯の家の謎」とかいうベストセラー本が思い浮かびますね。左様、本書の著者・岡崎いずみ氏は、あの本でひとやま当てた構成作家なのであります。さすがに目のつけどころがスルドイというか、その他大勢の一般ピープルの深層心理に潜むマニアック魂を心得ていると言いますか、とにかく「日ペンの美子ちゃん」で一冊の本をまとめてしまうとは恐れ入りました。
一応、知らない人のために説明しておきますと、「日ペンの美子ちゃん」とは日本ペン習字研究会なる通信講座の入会案内広告のための宣伝マンガです。いまから遡ること30年前。「りぼん」「明星」とかいった少女雑誌の裏表紙に、必ずと言っていいほど掲載されていたヘンテコなマンガを覚えている人は多いでしょう。あれが、「日ペンの美子ちゃん」でありますよ。作品自体は単なる宣伝マンガに過ぎないために、ほとんど意味のないものなのですが、あまりに長い間雑誌に連載されていたために、女の子たちにとっては有名作家の作品と同じレベルで記憶に残ることになりました。あのころ少女雑誌を愛読していた方なら、涙なしでは本書を眺められませんよ。美子ちゃんのキャラクターは現在までに4回も変わっているそうで、世代によって自分が出会った美子ちゃん捜しをする楽しみもできそうです。
しかし女の子の想い出に、「日ペンの美子ちゃん」があるなら、男の子の青春の想い出には「ブルーワーカー」のマンガがありますね。「昔、私は貧弱な男とさげすまれていた。そこで、ブルーワーカーを買って、トレーニングに励んだ。いまではたくさんの女性たちが私の元にやってくる」というあの四コママンガ。次は、本当にこの研究本が発売されるかもしれないね(笑)。
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