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痛快無比な飛行機の旅にようこそ!! [エッセイ]

 「機内暴力」という言葉があるように、飛行機内においても乗務員や乗客に迷惑をかける輩というのはけっこう存在するらしい。それも、ヤクザのお兄さんとか不良高校生とかではなくて、まったく普通のサラリーマンが突然危ないヒトに変身してしまうというのだから、始末に負えないのです。どうして飛行機に乗ると彼らは、そんな変人に変身してしまうのか? そもそも、どんな迷惑行動をおこしてくれるのか? エリッオット・ヘスター「機上の奇人たち」(文春文庫)を読むと、そんな彼らの奇行の数々が「ホントかよ?」と思えるくらいに盛りだくさんに語られ、人間の愚かな一面に改めて気付かされることになります。

 本書の著者であるエリッオット・ヘスターは、大手航空会社に勤める現役のフライトアテンダント。フライトアテンダントとはいっても、制服姿が男心をくすぐる美人のスッチー様などとはまったく違い、長身でスキンヘッドという、見るからにいかつい姿の黒人男性とのこと。彼が乗り込む飛行機内では、なぜだか毎度のように不思議な行為を楽しむお客様(場合によっては乗務員も…)が乗り込まれ、高度三万フィートの上空で事件を起こしてくれるのだという。一体、どんな事件が起こるのかって?

 異様な体臭(まるでゴミ溜の中に住んでいたような)を放ち、機内を一瞬のうちに毒マスクなしでは座っていられないほどの恐怖空間に陥れてしまう夫婦。豚やヘビといった不思議な動物を持ち込む男性。(盲導犬と同様の役割を果たすセラピーペットとして機内同乗が許可された豚ちゃんが、突然機内で暴れ出した事件もあったとか!!)人前で公然といちゃつき、挙げ句の果てには座席でナニの行為にまで至ってしまうというバカカップル。酒を飲み過ぎて、そこらかまわずゲロを吐きまくるお姉さん。はてはアルコールの勢いでやたらと好戦的になり、シートベルト着用するようにと注意されたこを不服としてスチュワーデスを殴り飛ばす男ども。噂には聞いたことがあるけれど、実に豊富な事例で「機内暴力」についてのあれこれをユーモアたっぷりに説明していただき、読者を爆笑の渦に巻き込むこと間違いありません。

 飛行機は満席、上空には乱気流、席はエコノミーのど真ん中。右隣の席には、膝の上で泣き叫ぶ赤ん坊をあやす母親が、右側にはブクブクにふくれあがった超肥満のビジネスマン……誰でも経験したことのある、こんなよくある飛行機内の情景で、本書で語られる事件は起こるのです。著者自身が自虐的に語っているように、まさにそれは地獄の旅。「ようこそ、ご搭乗くださいました。痛快無比な、楽しい(あくまで他人事である限り)旅の数々をご紹介いたします」とは、著者の冒頭のご挨拶。 お願いだから、今度自分が乗る飛行機で、こんな事件はおきないようにねと、読後は、そう願わずにはいられません。軽いタッチで書かれた爆笑エッセイではあるけれど、ホントは笑い事ではすまされない内容を持った事件の数々なのであります。


機上の奇人たち—フライトアテンダント爆笑告白記


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