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メディアのあり方を考える [ノンフィクション]

 メディアリテラシーというコトバは、最近では日本 の心ある教育関係者の間でもすっすり定着し始めているようです。訳すると「メディアを批判的に理解していく学習」ということになるでしょうか。メディア社会に生きる私たちにとって、ニュースやコマーシャルなどの映像がどのような目的のもとに、いかなる過程を経て作られているかということを学ぶことは、基本的読み書きと同様に重要な教育である。メディア先進国であるアメリカオやイギリスでは、そんな認識のもとに教育カリキュラムの中にメディア教育が盛り込まれているらしいのです。菅谷明子「メディアリテラシー」(岩波新書)では、そんな諸外国の活動を具体的にレポートし、日本の情報教育の今後のあり方について問題を投げかけています。

 コマーシャルを見ながら、先生と子供たちがその映像の疑問点を語り合っていく。「食べ物のCMは、どうして黒人はでてこないのか」「化粧品の雑誌広告は、綺麗な写真を見せるだけで何を訴えているのかよくわからない」・・・・・これは、本書で紹介されている外国の教育現場のほんの一例です。このようなメディア論を「国語」の授業の中で堂々と闘わせているという、レベルの高さ。メディアに流れる情報というのは誰かがある目的の元に恣意的に流している事実であって、それが現実の全てではない。それを理解することが、現代社会に生きる者にとって必須の能力であるという共通理解が徹底しているために、「国語」の授業でメディア論を展開するという発想が生まれてくるわけです。

 なにより注目すべきことは、本当に楽しそうな実践的な授業内容そのもの。メディアを批評するためには、自分たちで番組を作ることが一番わかりやすいわけですね。そのためには、ニュース番組やコマーシャルを現実のテレビ局の仕組みにあわせて(クライアントからの要求やスポンサー資金の流れもきちんと経験させながら)実際に作ってみるというのです。まるで専門学校のメディア教育の現場のようであり、こうした実践活動を体験した子供たちは、自然とメディアの裏側にある真実やウソを読みとる能力が育っていくというのも頷ける話です。

 インターネットの発展、さらにパソコンを使ったビデオ制作の発展によって、やる気さえあれば個人テレビ局も立ち上げることができるようになった現在。そんな時代背景があるからこそ、本書で語られているような先端のメディア教育を受けた子供たちが、大人になってどのような情報発信をするようになるのか非常に楽しみでもあります。メディアリテラシーの目的はなにもマスメディア自体を否定することではなくて、情報発信のあり方をみんなで考えていくことなのだから。


メディア・リテラシー—世界の現場から


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コメント 3

takam16

「ニューヨーク図書館」の方ですね。
最近実際ニューヨークに住んでおられる方の力を借りてやっと
記事をUPしたばかりです。この本は「未来をつくる図書館」の
最終ページの宣伝にもあった本ですね。
著者の雑誌記事などを国会図書館等でも少し読みました。
図書館からの情報発信というのはなかなか日本では難しそうな
問題なのかとも思いました。
by takam16 (2005-06-10 21:19) 

NO NAME

takam16さん、ご無沙汰しております。
図書館からの情報発信。とても素敵な言葉ですが、たしかに日本ではとても遠い道のりではないでしょうか。
私など、地元の図書館に対してはそんな理想論よりも、もっときちんとした新刊を揃えてほしいという気持ちで一杯です。ほとんどの田舎の図書館には図書館書司の資格を持ったヒトすらいないのが現実のようで、書籍購入に関しても専門業者任せという話です。
昨年に私がある本を某出版社から出した時に担当編集者が語っていた内部事情でした。おかげさまで私の本は図書館にはずいぶん売れたみたいなので、有り難い話でもあるわけですが(苦笑)。
by NO NAME (2005-06-11 22:47) 

Youkimu

http://www.japan-hotels.hippy.com/
by Youkimu (2006-01-13 02:10) 

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