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審判ほどつらい商売はない? [ノンフィクション]

 何かとお騒がせのプロ野球の判定事件。勝負の一級がアウトかセーフか、外野手が前進してスーパーキャッチした打球がワンバウンドかノーバウンドか、はたまた空高く舞い上がった打球がライトのポールを巻いてホームランなのかファールなのか……一つの判定が勝負の明暗を分けるシーンでは、判定をめぐる疑惑やトラブルが数多く起き、グラウンドでの暴力事件にまで発展することはみなさまもよーくご存じですね。

 まあプロ野球にかかわらず、他の競技でも審判の判定トラブルというのは尽きないわけではありますが、なぜか日本においてはプロ野球のそれが際だって話題に上るように思われます。それは果たして、プロ野球が国民的人気を誇るスポーツであるゆえなのか、それとも特殊な構造的原因によるものなのか。織田淳太郎「審判は見た!」(新潮新書)では、この問題を初めて選手側ではなく審判側から捉えることによってプロ野球における審判論ともいうべきものを提示することに成功しています。

 ジャッジは正しくて当たり前。ひとたび誤審でも起こそうものなら、選手や監督からはどつかれ、熱狂的ファンからは命さえ狙われるという因果な商売。マスコミもしょっちゅう攻撃するスキを探っているし、チームのオーナーからも「使用人」扱いされ、もちろん低賃金。選手達はグランドで派手な暴力事件を起こしても数日間の謹慎処分で終わっても、審判はカッとなってマスクを地面にたたきつけるだけで責任を取らされるという理不尽さ。プロ野球の構造改革が叫ばれて久しいですが、球界を影で支えるこのような人たちを邪険にしているようではその衰退も当然のことではありましょう。

 本書はまた、審判の仕事を通じて、プロ野球の裏面を語った面白い読み物でもあります。「暴動を招いた判定変更─狂気の球場からの審判団大脱出劇」「ルールを知らず、大恥かいた某チーム監督」「反感を買ったオーバーアクション─いじめで辞めた名物審判」「試合の途中で腹痛に─トイレ行きたさにゲームセット」「たった二ヶ月で帰国した3A審判」……等々。審判のまわりには、こんなにもユニークな事件や珍事に満ちあふれていたものなのですね。それにしても、審判ほどつらい商売はない? ホント、同情申し上げます。


審判は見た!


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コメント 1

lucksun

はじめましてこんにちは。
pon-puさんの書評は読み応えがあって、勉強になりますね。
日頃、自分では手を出さないジャンルのものばかりですが、
思わず読みたくなります。
ノンフィクションのおもしろさって、
こんなところにあったのか! と目からウロコでした。
by lucksun (2005-03-29 14:42) 

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