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史上最ウマの駅弁は何か? [料理・グルメ]

 日本の駅弁の中で、もっとも美味しいものは何か? なーんて質問をしてしまったら、食に関するさまざまなうんちくを持つグルメな方から旅行ライター、はては駅弁大会に足繁く通う「通な」人々たちから議論百出、それこそ収拾がつかなくなってしまうこと間違いありません。しかしそれを承知であえて私の独断を言わせてもらうなら、これまで食べた駅弁の中で最も美味しかったベストスリーは、折尾駅の「かしわめし」、西真鶴駅の「柿の葉鯖寿司」、小淵沢駅の「高原野菜とカツの弁当」ということになるでしょうか。駅弁というヤツは車中で食べるといやに美味しく感じられるくせに、お土産や駅弁大会で自宅に持ち帰って食べてみるとどうも味気ない。しかしこの三作品は、食品としていつでもどこでも誰と食べても美味しいこと請け合い。旅先で出会うことがあったら、どうぞお試しになることをお勧めいたします。

 小林しのぶ「ニッポン駅弁大全」(文藝春秋)は、駅弁一筋ン十年(?)、全国の駅弁を食べ歩いてきたという自称・駅弁の女王による最新の駅弁に関する総図鑑であります。こうした駅弁図鑑というのは実は過去にもムック形式で定期的に出版されておりまして、私はなぜか幼い頃からそれらを買い集めるのを趣味としておりました。結果として、何冊もの駅弁ムックがわが家には収蔵されていることになります。これらを眺めているだけで、駅弁に関する流行廃りが読みとれて面白い。本書は、平成時代に入って初めてまとめられた駅弁図鑑。過去において人気を博した名物駅弁の扱いが小さくなっていたり、私も知らなかった新顔が次々登場したり、最近話題の空弁(そらべん=飛行場で売っているミニ弁当)のカテゴリが登場したりと、さすがに時代の流れを感じさせてくれます。

 本書から読みとれる最新のモードとしては、地元の素材を使った高級幕の内弁当の充実でありましょうか。高級とはいっても、テレビ番組のお遊び企画で料亭に作られた五万円ものバカバカしい弁当(日光埋蔵金弁当なんてのが実際にあったのです)ではなくて、高くても一万円、多くは二千円以内のもの。それでも東京駅の「東京弁当」1,600円、森岡駅の「いわてのおべんとう」1,000円、金沢駅の「加賀野立弁当」10,000円等々のように、きちんと味付けされた正統派のおかずがぎっしり詰め込まれた幕の内弁当が評価を上げている様子。容器に凝ったり、デザインに凝ったり、ネーミングに凝ったり、変わった素材を使ったり、紆余曲折を得た後に、結局みんなが欲していたのがシンプルな弁当だったということなのでしょう。浅草今半の牛肉竹の子、人形町魚久のキングサーモン粕漬け、築地青木の卵焼き等、東京老舗のおかずが勢揃いした「東京弁当」なんて、今度新幹線に乗る時にはぜひ食べてみたいお弁当ですね。

 それにしても、本書は駅弁の写真が綺麗に撮れている。駅弁大全と呼ぶわりには過去のムック本と比較して、収納駅弁数が極端に少ないし、カテゴリ別に別れているので(普通は地域別)、眺めていても旅気分を味わえない。書籍形式のため、印刷代をケチってオールカラーではなくて、モノクロとカラーが交互になっている点など、実は減点ポイントが山ほどあるのだけれども、それを補ってあまりあるのがこの写真の美しさ。ページをめくっていると不思議とヨダレが湧いてきて、お腹が減ってくる。ついでに言うとどこかに旅したくなること必須の、困った本でもあります。


ニッポン駅弁大全


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