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恐ろしい拷問・処刑の数々 [ノンフィクション]

 子供の頃、東京タワーにある蝋人形館で見た一つのシーンをいまだに忘れることができません。それは、中世ヨーロッパで行われた拷問を再現したコーナーで、人間をまるで鶏の丸焼きのごとくに串刺しにしてつるしたものでした。案内文によると、それは「人類が考え出した最もつらい拷問」とのこと。つまり、人間をいかに長い時間苦しめながら死に至らすという観点から考えると、その拷問(というより処刑に近いけど)が最大の刑罰として中世ヨーロッパでは普及していた……とのことでありました。もう三十年の昔の話なのに、いまだに鮮明に覚えているのは、子供心にその恐ろしさに震え上がったからに違いありません。

 桐生操「人はどこまで残酷になれるのか」(中公新書ラクレ)を読んだ時、まさにこうした子供の頃の記憶が甦ってしましました。もしもみなさん、いま食事中だったらゴメンナサイ。本コラムを読むのは食事後にした方がいいですよ(苦笑)。というのは、本日ご紹介するのが、人間たちが過去に犯してきた(そして今だに続いている)残虐行為、拷問器具の数々を系統的に綴っていった「闇の世界史」とでも呼ぶべきなんとも気味の悪い書物であるためです。

 冒頭に紹介した「串刺し人間」以外にも、人類はこれまで本当に多種多様の拷問を考え出してきました。刺や釘を打ち込んだ「鞭打ち」。妻の不貞を防ぐために考案されたというカギつきの金属パンツ「不貞帯」。檻の中の鉄の重い屋根が何日もかけて徐々に堕ちてきて、最後は囚人を煎餅のように押しつぶしてしまうという「鉄の棺」。仰向けに寝かされた人間に口から大量の水を飲ませて変形・変色させて、文字通りゲロを吐かせる「水責め」。手足をそれぞれ別の馬に引っ張らせて、最後は引き裂いてしまうという公開処刑「四つ裂きの刑」……。どうです、これらを読むだけでなんだか食欲がなくなってきちゃうでしょ?

 そしてまたこれら拷問・処刑の数々を考えたり、実施してきたのは多くが独裁者や暴君、貴族といった恐ろしい人間たちでした。自分を中心に世界が回っていると信じてやまなかった権力者。富と権力を一手に背負い、人民の生殺与奪の権限を握ってしまうと、人間というのはこんなにも恐ろしいことをやってのけるのです。拷問というのはいつの時代でも、世界中いたるところで存在し、そして現在でもいまだに依然として存在し続けています。人間たちの哀しくも恐ろしい性を見極めるためにも、このような闇の歴史はきちんとつたえられるべき内容でありましょう。

 本書では拷問・処刑方法の列挙にとどまらず、惨殺魔と化した権力者列伝、処刑されてきた人たちの歴史、さらには人間とは思えない(思いたくもない)戦慄の殺人鬼たちに至るまで、まさに残虐の数々をこれでもかこれでもかと紹介してくれます。読んでいて目を覆いたくなる記述もたくさんありますが、不穏な世界情勢が続く現在だからこそ、価値のある本とも言えます。「人を痛めつけたい」という残虐な心は、実は一部の異常人格者特有の性格ではなくて、私たち誰もが持っているホモサピエンスの本能でもあるはずなのだから……。


人はどこまで残酷になれるのか


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Youkimu

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by Youkimu (2006-01-13 03:02) 

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