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ヒトは、どこまで再生できるのか? [医学・サイエンス]

 私たちは、もしかしたらとんでもない時代に生きているのかもしれません。ウルトラセブンの科学特捜隊の隊員が腕につけていたテレビ電話に憧れのまなざしを抱いていたのは、たったの三十年前。いまじゃあ小さな子供がケータイでテレビを見る時代ですよ。こうして原稿を書いているパソコンだって、十年前にここまで必要不可欠な道具となるなんて私自身想像もつかないことでした。現代においてはあらゆる分野において、テクノロジーの進歩がすさまじい変革を遂げているわけですが、医療の分野も例外ではありません。立花隆「人体再生」(中公文庫)を読むと、21世紀の驚異の科学医療の実体が、最先端の7人の学者たちのインタヴューをとおして理解することができます。

 本書の面白さを伝えるには、私があれこれ解説するよりも、目次の項目を列挙するだけで十分です。「ここまできた再生医学。プラスチックと人体の戦い」「百年の定説を覆す脳神経系の再生」「イモリの再生力は、ヒトに潜むか」「再生医療は次代の成長産業だ」「人工肝臓完成まで、あと一歩」「培養皮膚ビジネスの誕生」・・・・・どうです? これまでSFとしてか考えられなかったような絵空事が、実は最先端の学者たちによって着々と現実化されているというのです。失われた体の一部や皮膚、臓器を患者自身の組織片から取り出して、その細胞を体外で培養させることによって再生させ、それを体内に戻すという信じられない治療法こそ、ティッシュー・エンジニアリング(再生医学)と呼ばれるものなのです。

 再生医学を持ってすれば、ネズミの背中に人間の耳の軟骨組織を培養して「人間の耳を抱えたまま走り回るネズミ」を作ることすらも可能です。この映像はTBSの番組で流れたこともあるので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。一見、非常にセンセーショナルな気持ち悪い映像でした。しかしこうした技術が将来的に、人間の体のほとんどの部位を培養再生する時代がくるらしいのです。それこそ現在の最新医療と多くの人が信じている「臓器移植」など、百年先の人が振り返った場合に「昔はこんな野蛮な医療をやっていらしいよ…」と、笑い話として語られるに違いないと言います。再生医学にはつねにヒトがヒトとしてヒトを救うためにはどこまでの行為が許されるのかという人道上のテーマはつきまといますが、もっと多くの人たちが現代医療の先端で何がおこなわれているのかについて知識を持つ必要はありそうです。本書はその導入として、多くの知的興奮を味わわせてくれるはずですよ。


人体再生


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Youkimu

http://www.japan-hotels.hippy.com/
by Youkimu (2006-01-13 03:02) 

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