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キャッシュカードは鉄人28号のリモコンだ。 [ノンフィクション]

 好き嫌いは別として、現在の生活を営む上で欠かすことができなくなってしまったキャッシュカードとクレジットカード。しかしこのカードを見るたび、私はなぜかアニメの鉄人28号の主題歌を想い出してしまうのです。みなさん、あの歌の歌詞を覚えてますか? 

「あーる時は、正義の味方。あーる時は、悪魔の手先。いいも悪いもリモコン次第……」

 そんなアホな(笑)と思わずのけぞってしまいますが、鉄人のリモコンをめぐる攻防というこのいい加減さが確かにあのアニメの面白さの特徴でありました。

 しかし鉄人のリモコンを笑ってばかりもいられない。柳田邦夫「キャッシュカードがあぶない」(文藝春秋)を読むと、日本の銀行が発行しているキャッシュカードなるものが、ほとんどあの主題歌で謳われているような存在であることが確認でき、唖然とさせられてしまいます。

 もともと金融カードというシステムそのものに、問題があると私も昔から疑問を抱いてきました。とくにクレジットカードが大嫌い。暗証番号もなにも搭載せず、単にカード番号とカード期限と氏名を記すだけで買い物ができてしまうなんて、危険以外のなにものでもありません。インターネット上でクレジットカードの不正購入事件が相次いで発生することなど、当然の理だと私は思います。けれども、本書でキャッシュカード事件に対する銀行の対応を知ってしまうと、クレジットカードはむしろ安全なモノに思えてしまうから不思議。もし当人に身の覚えのない買い物がされていれば、カード会社は真摯に対応してくれますし、異常なキャシングをした人には即刻調査するという(アナログ的ではあるけれど)セキュリティシステムが確立されているからです。

 これに対して、キャッシュカードの場合はどうでしょうか? 老後資金としてためていた3,000万円を偽造キャッシュカードによって全額だまし取られたAさんも、キャッシュカードの盗難によってやはり全額を引き落とされたBさんも、銀行の対応も冷ややかなものばかり。カードの管理は顧客の「自己責任」であり、それによって生じたトラブルに対して銀行は一切責任を負えないというのです。警察に至っては、法律に正確に照らし合わせて考えると、お金を取られた被害者は銀行ということになり、あなたが主張できるのはブラスチックカード一枚の紛失届に過ぎないのだとか……。(銀行は一銭も損してないのだから、被害届けを出すわけがない!!)

 21世紀のコンピュータ社会において、このような前近代的な考え方をしている人々が存在していることにビックリ。そんな彼らに私たちが大切なお金を預けてきたという事実に気付いて、再度ビックリ。しかし驚いてばかりはいられません。敵は、そんな彼らの対応をあざ笑うかのように、日々最新技術を開発してカード情報を盗み取る手腕を進化させており、極端な話、私たちがカードを持ち歩いているだけで、カードに書き込まれている個人情報を盗み取られる危険性が否定できない時代に突入しているのです。著者が本書において怒りを込めて銀行や警察、政治家の怠慢を次々と責め立てるのは当然のことでありましょう。

 自分の身にもいつ降りかかるかわからないキャッシュカード事件。ようやく銀行も最近は重い腰を上げて、生態認証カードなどを開発するようになってきたけれど、欧米諸国の事件対応に較べるとまったく低レベルのそしりは逃れない。残念ながら現段階では、盗まれたら困る金額の貯金に関しては別口座をつくり、そこにはキャッシュカードを発行しない……この方法しかないようです。鉄人のリモコンがいつ盗まれるかびくびくしながら生活するなんて、精神衛生上あまりによろしくないことですからね。


キャッシュカードがあぶない


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Youkimu

http://www.japan-hotels.hippy.com/
by Youkimu (2006-01-13 02:32) 

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