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あたりまえは、ホントに大切か? [ノンフィクション]

 世の中、ホントおかしいと思うのだ。年寄りを大切にしよう。人のものを盗むのはやめよう。人から親切を受けたら、感謝の言葉を口にしよう……とかさ、昔なら小学校の道徳の授業(今は、そんなものないのか?)で教えていたところの「人としての基本」を、大人も持っていない方が多くなってしまったし、もしかしたら「人殺しをするのは、やめましょう」みたいな教育をするレベルまで、人々の倫理観は堕ちてしまっているのかもしれません。

 そんなところに現れたのが、ロン・クラーク「あたりまえだけど、とても大切なこと」(草思社)という本。学習や行動に問題を抱える生徒の多い学校から優秀児童を排出し「全米最優秀教師賞」を受賞した実績を持つ熱血先生による、子供を指導するための50の法則をまとめたルールブックであります。内容は、まさにタイトル通り。しかし「成功する児童教育のための50の鉄則」といった原題を使わず、「あたりまえだけど、とても大切なこと」と持ってくるところが、この出版社のネーミングの巧さでありましょうか。

 大人の質問には礼儀正しく答えよう。相手の目を見て話そう。だれかがすばらしいことをしたら拍手をしよう。人の意見や考え方を尊重しよう。勝っても自慢しない、負けても怒ったりしない。だれかに質問されたら、お返しの質問をしよう……これが、本書で言うところの50のルールたちなのですが、みなさんは果たしていかがお感じでございましょうか? 大切なことであることは誰もが認めることですよ。でも、こんなことをルール本としてまとめなくちゃいけないことに、そしてそれを使って教育する先生が評価されるという現在の情勢こそが、まさに病んでいると改めて情けない気持ちになりませんか。

 本当は、本書をよんで勉強が必要なのは世の中の大半のオトナたちのような気もします。成人式のプレゼントに、就職や昇進のお祝いに、本書をぜひご活用されてはいかがでございましょう。季節もちょうど春ですし。「ふざけんなッ」と怒られそうだけど、世の中はそれほどまでにおかしくなっていると思うのであります。


あたりまえだけど、とても大切なこと—子どものためのルールブック


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コメント 7

ace-cafe

実は今、本屋で働いているのですが、この本はソコソコ売れています。興味があり、子供用のほうは全て読んでみました。
大人用は「成功を掴む子供にするためにはどのように子供に接して行けば良いのか」読本だったので、敬遠してしまいました。

果たしてこういった本は、本当に必要か否か。
世風俗的には必要と感じますが、社会的には否だと感じています。
もしも、これがベストセラーだったとしたら、『今』は確実に非常識な国な訳でそれもそれで寂しいなと。
by ace-cafe (2005-04-15 19:21) 

pon-pu

なぜこのような本がベストセラーになってしまうのか?
一つにはもちろん、ネーミングの妙はあるでしょう。
タイトルに惹かれて、だまされて買うヒトも多いことと思います。
でもそれだけではこれだけ売れる根本的な理由にはならないはずですね。
やっぱり、世の中がそれだけおかしくなってしまっているのでしょうかね。
だからこそ、基本的な常識を説いていく必要があると
著者の熱い訴えが聞こえてきそうです。
でもしつこいけど、そんな熱弁は子供たちにではなくて
そんな世の中にした大人たちにしておいてくれと
子供に代わって申し上げたいと思います。
コメント、有り難うございました。
by pon-pu (2005-04-15 21:20) 

ace-cafe

どもども。
こちらこそコメントありがとうございます。

同意です。
どちらか読書家ではない僕ですが、本を作る立場から本を売る立場に変わったこの一年で、売れる本と内容の濃い本が必ずしもイコールではなくなっていることに気付きました。

売らなければいけない。
その気持ちもわかりますが、直接社会や風俗に関わってくる出版業界がその気持ちに囚われることに僕は憂いを感じます。

「本はネットより劣る」
これは出版業界自身が招いていると感じます。
提案すべきターゲットを見誤っているような。
それでも僕は出版業界に興味を惹かれてしまいます。
出来る限りの働きかけが出来れば良いと思う次第です。

また当店をご利用くださいな。
by ace-cafe (2005-04-15 22:43) 

NO NAME

この本はまだ読んでいないのですが、内容には興味があるので今度、図書館でリクエストしてみようかと思います。

子どもを指導する法則、ルールブックということですが、この本が売れるわけは何となくわかるような気がします。
親も教師も、子どもに関わるすべての大人が、それだけ自信がないということでしょう。
こういうマニュアルに頼りたくなるほど、どうやって子どもを導いていけばいいのかわからなくなっている。
この本は、大人たちにとって救いの神なのでは?
ただし、いくらマニュアルを学んだところで、ハートがなければ子どもたちの心には届かないことはもちろんです。
そこのところ、読んだ大人は誤解しないようにしてほしいですよね。

ところでsacanaさん。本を愛するが故に今日の出版業界に対する疑問や憂いはよおくわかります!
私は本屋さんも好きですが、古本屋にもよく行きます。
古本屋に行くと、いかにベストセラーと言われた本のほとんどが、ただの読み捨て、週刊誌なみの存在だったかがよくわかります。
在庫過剰になっているあまたのベストセラー本。
セカチューもハリー・ポッターも電車男も、

いい本は古本屋なんかに売らない。みんな手元に置いておきます。
出版社は古本屋をのぞいたことがあるのでしょうか?
それでもいいのかな。売れればね。
by NO NAME (2005-04-18 13:05) 

ゆうり

↑上のコメント、名前を書き忘れて失礼しました。
私はゆうりと言います。よろしくお願いします。
by ゆうり (2005-04-18 13:08) 

pon-pu

ゆうりさん、コメント有り難うございます。

<こういうマニュアルに頼りたくなるほど、
<どうやって子どもを導いていけばいいのかわからなくなっている。

とのことですが、私としては別に本書のようなマニュアルに頼らなくても
自分たちでルールを作れば、それで良いのでは?と思っています。
金八先生が、黒板のヨコにいつも大きく3Bのルールを書いておくでしょう?
「発言する時は、手を挙げる」「人の話を妨げない(だっけ?)」とかいうヤツですよ。
本書を著した先生は、言うならば自分でこれらのルールを作り上げて、生徒の指導に画期的成果をあげた成功者。彼の教育事例を知るだけなら面白いと思うのですが、なんだか本書は彼がつくったルールをどこでも使えるマニュアルとしてまとめているようなところがあって、私としては少々気に入らないわけでございます。
是非読んでみて、ご感想をいただけると幸いです。
by pon-pu (2005-04-19 09:58) 

Youkimu

http://www.japan-hotels.hippy.com/
by Youkimu (2006-01-13 03:05) 

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