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次世代の地球を征服する生物 [ノンフィクション]

 都会のカラスほど不気味な鳥はいません。不気味な目を輝かせて、巨大な体をゆすらせ、生ゴミをあさる姿を見ていると、大の大人でも恐怖心を持ってしまいます。しかも知能が非常に高く、雑食性であり、生存能力は動物の中でも抜群に長けていると言います。生ゴミなどあさらなくても、ネコ、ネズミ、鳩、蝉・・・・といった生物から植物まで、動物の排泄物であろうと、場合によってはカラス(つまり共食い)ですら食べてしまう。田舎のカラスは、自分を捕獲する鷹やワシといった猛禽類のヒナを襲うこともあるらしい。食べるためなら、自分の命も省みないというこのグルメな執着心は、まさに人間そのものの姿を見るようではありませんか。

 唐沢孝一「カラスはどれほど賢いか」(中公文庫)は、長年都市鳥を研究してきた著者による、カラス研究の集大成本であります。都会のカラスの生活様式を探るため、朝から晩までカラスの生態を追っかけた詳細報告。都会のカラスの子育てや、営巣場所、針金ハンガーを使って作るユニークな巣作り。滑り台で滑って遊ぶカラスの遊技。道路にクルミを落として自動車に割らせ、中身を頂くという知能的なカラスの食事法・・・・。どれを読んでも、ここまでカラスの知能は高いのかと唖然とさせられることばかりであります。そういえばあるテレビ番組でも、神社のお賽銭を盗んできて鳩のエサが出てくる自動販売機にコインを入れ、それを食するというとんでもないカラスの姿を紹介しておりました。

 科学的に見ても、カラスの知能はサル以上であるどころか、脳の総重量に対する脳細胞比率は人間の十倍という数値を示しているらしいのです。うーん、参った。それほど知能の高い生物が、都心ではものすごい勢いで生息数を増やしていると言いますし。著者の研究成果によりますと、都心のカラスの現在の生息数は約三万羽。年々10%以上の割合で増え続け、その勢力はアメリカ帝国のごとく拡大の一歩をたどっているのであります。このままでは私たち人間の地球支配も、そう長いことはないような気がしてきます。カラスを見て私たちが不気味に感じるのは、真っ黒なその容姿からイメージするだけでなく、その知能や生存力に対して人間が本能的な恐怖感を抱いているのかもしれません。いずれにしても、次世代の地球の覇者はカラスかゴキブリである。これは間違いない事実でしょう。彼らを見ていると、正直言ってかないませんわ、イヤ、ホント。


カラスはどれほど賢いか—都市鳥の適応戦略


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コメント 2

ace-cafe

へぇ〜!
そんなにカラスって頭が良いのですね。
実害を受けたことがないので、テレビで見る程度だったのですが、そこまでだとは(汗)。
大学の屋上で30分にらめっこしたことがあるのですが、実はあの時バカにされてたんだろうか。

先日、うちの店にゴキブリ図鑑という本が入ってきたのですが調べてみるとゴキブリを嫌うのは日本人だけで世界ではそこまででもないそうですね。
世界ではカラスなんてどう見られてるんだろう。

話は変わりますが、pon-puさんの本レビューはとても面白いので読者登録させて貰ってもよろしいでしょうか?
by ace-cafe (2005-04-19 01:21) 

pon-pu

カラスのヒトを認識する能力というのは、我々の想像をはるかに超えているようです。大人、子供といった大きさの区別だけではなく、その人が毎日行う行動パターンをきちんと見極めているので、自分たちに害を及ぼさない相手と見ると、もう平気で安心してエサをつつく姿を経験したことがあるのでは?

田舎の畑でカラス狩りをする時に、当日になると不思議とカラスの姿が見えなくなるという話も聞いたことがあります。多分、前日に農家の人たちが打合せをしたり、鉄砲の準備をしている姿を見て「明日、やるぞ」とカラス同士で連絡がいきあうのでしょう。これにはお手上げだよ、と農家のヒトも笑っておりました。

読者登録、もちろん大歓迎でございます。ご丁寧に、どうも。ちょんまる・こまおーというヤツで。(すみません、最近ついに夢にまで韓国語が飛び交うようになってきたものですから……)
by pon-pu (2005-04-19 09:36) 

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